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◆namelessさんからのご投稿
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                             残酷な女神達(続・手紙) その8 (完)
 
遼子が男の子を出産して、三十年近い歳月が過ぎた。子供は“雄一”と名付けた。出産後、しばらく遼子のマンションに住んでいたが、互いの両親の勧めと資金援助もあって、郊外に一戸建ての住宅を購入した。その一室は楽器の練習をするという名目で、完全防音にリフォームした。もちろん調教部屋だ。譲治と遼子は一人息子の雄一に自分達の特殊な性生活を絶対に知られたくなかったので、調教道具は特注のダイヤル錠を設置したクローゼットに保管し、調教は雄一が熟睡している深夜に行った。遼子は貞代と利奈にも厳重に口止めした。利奈が中学・高校の時は貞代と一緒にちょくちょく遊びに来ていたが、遠くの大学に進学して、何時しか来なくなった。貞代も寄る年波には勝てず、徐々に足が遠のき、十年前に天寿を全うした。息子の雄一はすくすく育ち、成績優秀でスポーツもこなす好青年に成長した。進学高校から国立大学に進み、現在は大手金融機関に勤めている。優秀で有力な幹部候補と見なされており、譲治と遼子の自慢の息子となっていた。譲治も会社内で順調に出世の階段を上り、現在は役員の席に就いている。二十七歳の雄一は半年前に三歳年下の美奈子という名の美しい女性と結婚し、現在同居していた。美奈子は顔立ちと雰囲気がどことなく遼子に似ていたので、男の子は母親の面影を追い求めるものかと譲治は苦笑した。
今、譲治はブランデーを舐めながら、テーブルに置かれた写真立てを寂しそうに眺めていた。還暦を迎えた譲治の頭は白髪で覆われ、背中が少し丸くなった様に見えた。写真立ての中で遼子が笑っていた。彼女は雄一の結婚式前から体の不調を訴えており、結婚式の後に精密検査を受けたところ、癌を患っていることが判明した。直ちに入院したが、既に全身に転移しており、痛みを減らす以外の治療は出来なかった。譲治は嘆き悲しみ、泊り込みで看病したが、癌でやつれ、美貌を失っていく遼子を見るのは辛過ぎた。譲治は夜の病室で遼子と二人きりになった時、進んで尿瓶の役目を務めた。譲治は遼子の陰部を舌できれいにしながら、
「遼子様、お願いです。私を一人にしないで下さい。」
と哀願したが、遼子は寂しそうに微笑んで彼の頭を撫でるだけだった。入院して三ヵ月後、遼子は
「…後はお願いね。」
と一言だけ言い残し、永遠に目を閉じた。息子の雄一は遼子の体に取りすがって号泣し、嫁の美奈子も泣きじゃくったが、譲治は無表情に呆然と立っているだけだった。本当に悲しいと人間は泣けないという事を、譲治は初めて知った。遼子が亡くなってから三ヶ月間、譲治は精力的に動いた。葬儀の仕切り、遼子名義の財産の整理、四十九日の法要、それに加えて会社の多忙な業務と、何かをしてなければ自分が倒れそうだった。そして、一通りの事が一段落した今、ぼんやりと遼子の写真を見ながら、ブランデーを舐めていた。
譲治は今までに、自分に被虐の喜びを与えてくれた女性達を回想した。遼子を初めとして、利奈、貞代、貞代の友人達…利奈は成長すると譲治を空手のサンドバッグ代わりにしたり、貞代達の集会に参加して一緒に譲治を虐めたりした。また、高校時代に同じ空手道場に通っている親友の女の子を連れて来て、一緒に譲治を虐めた事もあった。貞代の友人達も口の堅い親戚の女性を誘ったりして、一体何人の女性達が譲治を支配したのか、正確には分からない程であった。彼女達は譲治に被虐の喜びを下賜してくれた、正に女神達であった。しかし現在、女神達はいなくなり、被虐に飢えた譲治一人だけが残されていた。譲治は白髪頭を掻き、女神達の思い出に浸ろうとした。
その時、嫁の美奈子が封筒とクッキーの缶を持って、譲治の前に座った。
「お義父様、お義母様の事を思い出されているんですの?」
美奈子は微笑みながら尋ね、譲治は曖昧に答えた。
「うん、うむ、いや…それより美奈子さんこそ、雄一が出張で寂しくないかね?」
雄一は一週間前から、シンガポールに一ヶ月の海外出張に出かけていた。
「いいえ、毎日メールしてくれますし、後三週間程で戻って来ますから。」
「そうか。雄一が戻ったら、二人の新居を探さないといけないな。何時までも私と同居じゃ、美奈子さんに負担が掛かり過ぎるしね。」
譲治はブランデーを舐めながら、優しく話した。しかし、美奈子は急に真剣な表情になった。
「いいえ、私はお義父様とずっと一緒にいて、御世話いたします。そう、お義母様と約束したんです。」
譲治は意外そうに美奈子を見つめた。
「美奈子さん、その気持ちは嬉しいが、やはり若い二人で暮らした方がいいだろう。亡くなった遼子との約束に固執する必要は無いんだよ。」
「いいえ、これはお義母様の意思でもあります。これをお読みになって下さい。」
美奈子は手にしていた封筒を譲治に差し出した。譲治は中の便箋を取り出して読み、驚愕して目を見開いた。彼は震え声で美奈子に尋ねた。
「美奈子さん、これは…」
便箋には、こう書かれていた。
 
男奴隷、譲治へ
 
お前を奴隷として美奈子さんに譲渡します。今後は美奈子さんを私と思って、忠誠を尽くしなさい。これは遺言状ではありません。お前が昔、私に寄こした手紙への最初で最後の返事です。
 
                         遼子
癌に冒されたせいか、些か乱れていたが、確かに遼子の筆跡だった。美奈子は黙ってクッキーの缶を開け、譲治の方に押し出した。中には自分が昔、匿名で倒錯した性の願望を書き綴った手紙の束と、遼子が作成した奴隷契約書が入っていた。
「美奈子さん、これは一体どういう事…?」
譲治は上ずった声で尋ね、美奈子が説明を始めた。
「お義母様が入院なさった時、着替えを探していて、押入れの奥からこのクッキー缶を見つけたんです。中を見て、お義父様とお義母様の性生活、それと完全防音になっている部屋の秘密が判りました。それで、大変失礼ながら病床のお義母様にお願いしたんです。お義父様を奴隷として譲って欲しいって。」
譲治は唖然として、美奈子の説明を聞いていた。
「お義母様も最初は驚かれてましたが、直ぐに微笑んで許して下さいました。そしてクローゼットのダイヤル錠の番号を教えて下さり、お義父様の御世話を私に託されたのです。」
譲治は再度遼子からの手紙を読み直し、自分が昔送った手紙の束と奴隷契約書を見つめた。遼子は自分の変態願望を書き綴った手紙を、ずっと保存してくれてたのだ。自分を美奈子に奴隷として引き渡したのも、自分のマゾヒストとしての性を十分に理解してくれてたからだろう。譲治は初めて遼子の深い愛を感じ、彼女が亡くなって以来流すことの無かった涙が溢れ出た。彼はテーブルに突っ伏し、肩を震わせて号泣した。美奈子は黙って、譲治が泣き止むのを待った。少し落ち着いた譲治が顔を上げると、美奈子はテーブルの上に首輪を置いた。それは奴隷調教の時に、いつも譲治が首に嵌めている物だった。
「私は身支度がありますから三十分後に例の部屋へ、裸になってこの首輪を着けて来て下さい。」
美奈子はそう言って、席を立った。残された譲治は涙でぼやける目で首輪を凝視した。彼はふと、遼子の最後の言葉を思い出した。
“…後はお願いね。”
それは自分ではなく美奈子に向けられた言葉だったと、今になって分った。譲治は呆然と座っていたが壁の時計を見て、そろそろ三十分近く経過したのに気づき、慌てて動き始めた。洗面台で涙でくしゃくしゃになった顔を洗い、服を全て脱ぎ捨て、テーブルの首輪を嵌め、調教部屋へ向かった。きっかり三十分後に恐る恐る調教部屋のドアを開けた。
部屋の中央に美奈子が立っていた。彼女の髪はアップでまとめられ、きつめのメークをして、肘まである長い黒革の手袋、ガーターベルトで吊るされた網タイツにヒールの高い黒光りするブーツ以外は、ブラジャーもパンティも身に着けておらず、形のよい豊かな乳房と股間の濃い繁みが丸見えだった。左手はくびれた腰にあて、右手は輪にした一本鞭を持ち、仁王立ちになっている。そこには、かいがいしく可愛らしい嫁の美奈子は存在せず、威厳と気品溢れる女主人としての美奈子がいた。
譲治は初めて見る美奈子の姿に見とれ、吸い寄せられるようにふらふらと近づき、彼女の足下にひれ伏した。被虐の喜びを与えてくれる女神が皆いなくなったと落胆していた譲治に新たな女神が降臨し、感激で鼓動が高まった。
「美奈子様、御調教を宜しくお願い致します。」
譲治が奴隷の口上を述べると、美奈子の右手が閃き、譲治の背中に一本鞭が強く叩きつけられた。
「うわぁーっ」
背中を切り裂かれるような激痛に、譲治は悲鳴を上げて仰け反った。美奈子のブーツが仰け反って顔を上げた譲治の頬を容赦無く蹴り飛ばし、彼は床に転がった。美奈子は倒れた譲治の頭を踏みにじり、叱りつけた。
「お前は何年奴隷をしてたの!口の利き方に気をつけなさい。“調教をお願いします”って何よ!奴隷が願い事なんか言える訳無いでしょう。言うのなら、“私を使って存分にお楽しみ下さい”じゃなくて!」
「わ、私を美奈子様のお好きなように御使いになられて、御存分にお楽しみ下さいませ。」
今まで舅の立場で嫁として接してきた美奈子に鞭打たれ、蹴り飛ばされて踏みにじられ、叱りつけられた譲治は、あまりの屈辱に眼の奥が熱くなり、涙が滲んだ。だが、その屈辱はマゾヒストの譲治にとって甘美で懐かしいものでもあった。彼の股間のものは年甲斐も無く、頭をもたげてきた。美奈子はブーツを譲治の頭から外し、命令を下した。
「膝立ちになって、手を後ろにお廻し!」
美奈子は譲治の背後に廻って革手錠で両腕を拘束すると、彼の正面に廻った。彼女は譲治の股間を指差して嘲笑った。
「あらあら、お義母様の言われた通りに股に“遼子の奴隷”と刺青されてるのね。本当に変態奴隷だわ。」
譲治は遼子が亡くなった後も彼女を思い、義務付けられた陰毛剃りを続けていたので、股間の刺青が丸見えだった。しかし、それを美奈子に指摘され嘲笑われるのは、恥ずかしくて顔が真っ赤になった。
「今度その上に“美奈子と”って刺青して上げるわ。そうすれば“美奈子と遼子の奴隷”になるでしょう。」
美奈子の提案に譲治は鳥肌が立った。
「あら、お前は不満なの?」
「いいえ、そんな事ありません。」
譲治は慌てて首を横に振ったが、美奈子は鞭を握り直した。彼女は譲治の胸に袈裟懸けに鞭を浴びせた。
「うぎゃーっ」
譲治は胸肉を削ぎ取られた様な痛みに悲鳴を上げ、うずくまった。美奈子は彼の首筋を踏みつけた。
「相変わらず口の利き方が悪いわね。“ありません”じゃなくて“ございません”でしょう。お前は心の底で、舅として嫁の私を軽く見てるのよ。だから、そんな言葉使いなんだわ。」
「いえ、決してそんな事はございません。」
「お黙り!口で言っても聞けないなら、体に教えてやるわ。覚悟おし!」
美奈子は一旦譲治から離れて間合いを取り、鞭を振り上げた。
「ひいっ、お許しを、美奈子様、どうかお慈悲を!」
譲治は懸命に美奈子に慈悲を請うたが、返ってきたのは鞭の嵐だった。美奈子は興奮して目を吊り上げ、顔を赤くし、豊かな乳房を揺らして容赦無く鞭を振るい続けた。後ろでに拘束されている譲治は悲鳴を上げ、床を転げ回って逃れようとしたが、反って万遍なく体中を鞭打たれるだけだった。体中を切り刻まれるような激痛に、譲治は悶絶した。ようやく美奈子の鞭が止んだ時、彼の体は赤い筋で覆われていた。うつ伏せで喘いでる譲治の顔の近くで、鞭が床を叩いた。
「ひいっ」
「いつまで寝ているつもり!私の前に平伏するのよ!」
「は、はい、ただいま。」
譲治は鞭打たれて引きつる体を無理に動かして、仁王立ちになっている美奈子の足下にひれ伏した。美奈子は譲治の頭をブーツで踏みにじる。
「これで、お前はもう義父じゃない、私の足下でうごめくただの老いぼれ奴隷、一匹の変態マゾ豚だって事が分ったかい!」
譲治は頭上から美奈子の罵声を浴びせられ、あまりの口惜しさに体が震え、涙がこぼれた。嫁の美奈子に舅の自分が鞭で屈服を強いられる屈辱は耐え難いものであった。しかし、これ以上鞭をもらわないためには、美奈子に服従するしかなかった。
「は、はい…私は美奈子様の老いぼれ奴隷です…美奈子様に鞭で教えて頂いて、骨身に染みて分りました…」
譲治は屈辱でつっかえながらも、何とか答えた。美奈子は勝ち誇るように尋ねた。
「じゃあ、心の底から本当に私の奴隷になるのね?」
「はい、なります。いえ、私を是非美奈子様の奴隷にさせて下さいませ。私の様な卑しい老いぼれの変態が美奈子様の奴隷になれるなんて、身に余る光栄です。」
美奈子は満足そうに笑い、譲治の髪を掴んで頭を引き上げ、彼の口を自分の陰部にあてがった。
「少しは口の利き方を覚えたようね。いいわ、奴隷の契りに私のおしっこを飲ませて上げる。大きく口をお開け!」
譲治は言われた通りに大きく口を開け、美奈子の陰唇に密着した。
「老いぼれ奴隷、出るわよ。一滴もこぼすんじゃないよ!」
美奈子は譲治の口に容赦無く放尿した。譲治はこぼさないように必死で次から次に流し込まれる尿を飲み続けた。喉を焼き、胃に溜まっていく尿が自分の奴隷としての立場を強く認識させた。美奈子の尿は、自分を徹底して貶める汚水なのか、降臨した女神からの神酒なのか、譲治には判らなくなっていた。判っているのは、マゾヒストである自分の股間のものが興奮して猛り狂っている事だけだった。
遼子は放尿を終えると、譲治に舌で後始末するよう命じた。譲治は舌を伸ばし、美奈子の興奮して赤くなっている陰唇を丁寧に舐め、唇で奥に残っている尿を吸った。口中に尿独特のアンモニア臭が広がり、惨めさが倍増した。
「なかなか上手じゃないの。さすがはお義母様仕込ね。」
譲治の舌使いに美奈子は満足したようで、ひとまず安堵した。しかし次の美奈子の言葉は譲治の頭をバットで殴りつけたような衝撃を与えた。
「これはお義母様にも言ってなかったけれど、特別に教えて上げる。お前の自慢の一人息子、雄一だけど、結婚前に私が奴隷に仕込んでやったの。変態のお前が父親だから、息子もきっとマゾになったのよ。雄一が戻って来たら、父子一緒に奴隷調教して上げるわ。」
息子の雄一だけは、この倒錯した性に関わって欲しくなかった。遼子もそう望んでいたのに…。不意に譲治の脳裏に三十年近く前、貞代が自分に言った言葉が蘇えった。
“変態のお前が父親だから、その男の子もきっとマゾね。成長したら、父子一緒に奴隷調教して上げるわ。”
まさか三十年近く経って貞代の言葉が美奈子によって現実になるとは、想像もつかなかった。これも自分がマゾヒストとして生まれて来た宿命なのだろうか。譲治は美奈子の陰部を懸命に舐めながら、自分がさまよってきた被虐の迷路に出口は無い事を思い知らされた。こうして譲治の家は、美奈子に完全に支配されたのだった。
(完)      
その7へ       
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私が、壊した男。4
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